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空飛ぶ前衛美術家の糸川裕志の富士山と江ノ島シリーズの箱絵
30年も前、渋谷・西武百貨店の「こうげい」で求めた田島隆夫作の淡彩画です。「こうげい」は、いわずと知れた故・白洲正子さんが経営していたギャラリーです。白洲さんの卓抜な審美眼で選び抜かれた美しい工芸品が並んでいる店でした。出品者は若いころ、この「こうげい」に入り浸り、白洲さんの薫陶を受けました。今でも菅原匠の榀布の藍染間仕切り、福森雅武の土楽窯の汲み出し茶碗など、座右で親しんでいるものがたくさんあります。さて、本出品はその白洲正子さんが敬愛してやまなかった織司・田島隆夫の筆になる淡彩画です。墨で掘り出されたばかりの筍が黒々と描かれます。そして、その上に杜甫の七言律詩「江村」が添えられています。清江一曲抱村流長夏江村事事幽‥‥‥清らかな流れが一曲りして村を抱き込むように流れていく。長い夏には川沿いの村はあらゆる物がのんびりしている自去自來梁上燕相親相近水中鴎‥‥‥自由に出入りする梁の上の燕。人に慣れて近づいてくる水中の鴎。老妻畫紙為棋局稚子敲針作釣鉤‥‥‥老いた妻は紙に描いて碁盤を作り、幼な子は針を叩いて釣り針を作る。但有故人供禄米微躯此外更何求‥‥‥ただ旧知の人が禄米を分けてくれさえすれば、取るに足らないこの身に、これ以上何を求めよう。白洲正子さんの「遊鬼　わが師、わが友」（写真7）によると、織司の田島隆夫にとって絵は余技にすぎない、しかし、それが欲がなくて気持ちがいいのは、田島さんの織物に似ているからだ、とあります。そして、「‥‥‥どちらかと云えば、それは絵日記に近いもので、椿が咲いている時は椿ばかり、筍がある時は筍ばかり写生して倦むことがない。畑を作っているので、野菜や果物にも事を欠かない。その絵を見れば、彼の生活を知ることができる」（p.124）とも書いています。本出品の筍の絵も、そうした田島隆夫の晴耕雨読の生活から生まれてきたことが、先の杜甫の漢詩と相俟ってよく理解できます。最後に田島隆夫の略歴を記しておきます。1926（大正15）年、埼玉県生まれ。若いころ、柳悦博氏に師事。1960年以降、白洲正子氏.洲之内徹氏らの知遇を得て、織物と趣味の書画を絶賛される。1996年逝去、享年70歳。絵画の寸法　横53.2センチ　縦26.8センチ高額商品ですので、価格のご相談は随時お受けしております。